前回は、辻元流エクステリアの、“引き戸”の特徴をご紹介しました。 今回はこの外構デザインの“アプローチ”と“植栽”に注目してみましょう。
アプローチは、玄関まで真っ直ぐにのびています。シンプルモダンな建築物に対して、エクステリアもシンプルにすることで、使いよさと『安心』をデザインしているのです。アプローチは玄関ドアと同じ幅・同系色を使用し、すっきりとまとめました。そのシンプルさはオープン外構にも通じるスタイルですが、引き戸を寄せればもちろんクローズにもなります。
前回紹介した引き戸につづき、この外構の第二のポイントとなるのは、実は高木の位置です。
それぞれに役割を持たせ、「ここだけは」の3本に限定した植栽計画となっています。
[A:落葉高木]…2階バルコニーでくつろぐ人の「見え隠れ」の1本
[B:常緑中木]…隣地境界と機能ポールをつなぎ、玄関まわりを引き締める1本
[C:常緑中木]…部屋から、プライベートガーデンからの目隠しの1本
そして、下草です。
見せすぎず、隠しすぎず、デザインをつなげる。それが下草のレールへの「気くばり」になります。
このデザインのように「引き戸とそのアクセントカラー」「玄関ドアと揃えた色合い・幅」など、エクステリアデザインに全体のつながりがあると、建物との調和が可能になります。 一方で、機能がデザインに表れ、引き戸位置の変化などの遊びで、外構に動きが出てきます。 そして、この外構全体の決め手は3本の高木です。左右・前後の位置と高低差は建物と外構をひとつにまとめ、目隠しの役割もするエクステリア・庭の要なのです。
外構・庭と住宅が一体感を持ち、日常生活の機能をはたすこと。これが辻元流エクステリア・庭です。
では次回、お楽しみに。
1942年生まれ
「エクステリア」が周知される以前より住宅の外廻りに魅せられ独修。機能性を重視した独自のデザインを乞われ、エクステリアメーカーの門扉・フェンス等のデザイン開発に関わる。
大手ハウスメーカー モデル住宅のエクステリア設計を多数手掛け、個人住宅の庭・造園 エクステリア設計の第一人者との評を受ける。
1984年 エクステリア・造園 設計事務所 SUTADIO dim を設立。大阪国際花の博覧会(郷土デザイン部門)最優秀賞受賞。近年はエクステリア・造園を志す若手の教育に力をそそぐ。